「影響力の武器」はアメリカの心理学者ロバート・B・チャルディーニの書いた本で1984年に発売されたロングセラー本です。
この本では作者自身の苦い経験なども例に挙げながら「人を説得し、その人から望む行動を導き出す」ための6つの心理スイッチの解説をしています。
営業マンだけでなく、普段生活している上で、知らず知らずのうちに様々な場面で使われている6つのテクニックを知ることで「騙されたり丸め込まれたりしないために、自分自身をどう守ればよいのか?」が書かれています。
いい本なのはわかるけど、普段読書をしない人には3000円と本にしては高め、文字のぎっしり詰まった450ページもある厚い本は取っ付きづらい…少しくらい読書する人にも例文が多く洋書の翻訳本は苦手…で挫折なんて声も聞きます。
そんな方の為にわかりやすく解説します。
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0・自動反応
アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド
動物には「固定的動作パターン」があり、七面鳥が例に説明されています。
母鳥はヒナ鳥の、
「ピーピー」と言う鳴き声で優しく世話をし、
「ピーピー」と鳴くというだけで天敵のイタチ(テープレコーダーを仕込んだ剥製)を抱きしめ、
「ピーピー」と鳴かないというだけで虐待したり殺してしまいます。
この自動反応は人間にも当てはまり、
・「値段の高い物はいい物だ」
・「行列の出来るタピオカ屋は美味しい」
・「医者・弁護士の言う事は間違いない」などと思ってしまってます。
この反応は心理学的原理が働いており大きく6つに分ける事ができます。
1・返報性
何かをもらったら(してもらったら)、お返ししようとしてしまう。
昔からある「ギブアンドテイク」ですが、知らぬ間に恩義を感じてしまい、不公平な交換を引き起こしてしまいます。
無償提供から長期の契約やスーパーの試食なんかはいい例だと思います。
そのお返しはしてもらった事に見合ってますか?過剰はお返しは相手にも失礼だという感覚を持ちましょう。
2・コミットメントと一貫性
自分が一度決めた事は変えたくないと思ってしまう。
一貫性を保つことで社会から高い評価が得られるし、日常的には有益で、複雑な現代社会をうまくすり抜けるのに役立つ「思考の近道」を提供してくれます。
しかしながら、最初のコミットメントをしてしまうと、承諾先取り法(ローボール・テクニック)と呼ばれるものにつまづいてしまいます。
買うことにコミット(決めている)してるので、次の要求が通りやすくなっています。
アップセル(アップグレード)とクロスセル(抱き合わせ)と呼ばれるもので、最初に「買う」と決めた物より高い物を買ってしまったとか、勧められるままにその商品の関連商品まで買ってしまったなんてことはなかったでしょうか?
例えば、以前から欲しかった服を買う事に決めて(コミットして)、ショップに行ったけど売り切れていたので、ついつい他の服を買ってしまった。
新車を買う事を決めた後に、同車のグレードの高い物にしたり、オプションで当初の予算をオーバーしていませんか?
この2つの例は、一度買うと決めてしまったので、自分で決めたことは変えたくないと言う心理スイッチが入り買ってしまうという風に考えられます。
このスイッチが入ると、不要な物や値段が高くなっても購入してしまいます、気をつけましょう。
スイッチが入った事を自分で自覚してセーブして下さい。
人間は時と場合により一貫性を保つのが難しい事もありますが、柔軟に対応できるようになりましょう。
3・社会的証明
多くの人の言う意見が正しいと思ってしまう。
社会的証明は以下2つの条件の時に強い影響力を持ちます。
①不確かな時に人は、
(「自分の決定に確信を持てない時」「状況があいまいな時」)
に他人の行動に注意を向けそれを正しい物として受け入れようとします。
②類似性。自分と似た他者のリードに従う傾向がある。
例えば、ネット通販で買い物をする時に、迷っている時ほど口コミのチェックしてしませんか?
これによって社会的証明のスイッチを入れらてるかもしれません。
結局は最後に決めるのは自分自身です。他人の意見を取り入れるのもほどほどに…。
4・好意
好きな人の意見は正しいと思ってしまう。
人は自分が好意を感じている知人に対してYESと言う傾向があります。
また、好意に影響する要因の一つとして、その人の身体的魅力(かっこいい!かわいい!!美人!!!)がありますが、
身体的魅力の高い人はハロー効果を生じさせ自分の要求を通したり他者の態度を変化させる際の影響力が大きくなります。
自分の好きな芸能人がテレビCMで商品の宣伝するのを何度も目にする事で、商品の購入を促していますし、
いい営業マンは、何度もあなたと接点を持つことであなたが営業マンに好意を抱くことを知っています。
その好意は作られたものかもしれないと言う自覚を持つ事も必要かもしれません。
好意が及ぼす悪影響を防ぐのに有効な手段は、
スイッチを入れようとする相手に対して過度の好意を持ってないかという事に敏感になることが必要です。
5・権威
肩書きのある人を信用してしまう。
TVで大学教授のコメンテーターや感染症予防の専門家などの意見はすんなり受け入れてしまいます。
権威者の影響力による有害な効果から自分自身を守るために使える質問が2つあるので試してみてほしい。
「この専門家はどのくらい誠実だろうか?」
2番目の設問に関しては、信頼を増すために使われる策略であることに注意しなくてはならない。
最初に専門家は、自分自身に不利な情報を私たちに提供することによって、誠実にみせかけ、その後の全ての情報を信頼できるものだと相手に思い込ませることができるのでやっかいです。
6・希少性
数の少ない物に価値があると思ってしまう。
希少性の原理によれば、人は機会を失いかけるとその機会をより価値あるものとみなします。
限定!!今だけ!!残り○○個!!閉店セール!!などに弱い人はこのスイッチが入りやすいようです。
いつも満席の店、その入場制限は作られたものかもしれませんよ。
物だけでなく情報にも適用されます。
情報へのアクセスが制限されると、人はその情報がより価値のあるものだと思い信用してしまいます。その情報は信用するに足りますか?
最期に
この6つの心理スイッチが押されると、無意識に動かされてしまう。
わかっていてもあらがえないのがこの6つのアプローチの怖い所です。
世の中にはこの心理スイッチを使って販売する手法がたくさんあります。
もし、あなたがその商品を欲しいと思ったら一度立ち止まって考えてみて下さい。
「今、自分にとって本当に必要なものなのか?」それとも「6つのスイッチのどれかが入っているだけなのか?」
これを読んだあなたなら正しい選択が出来るようになるはずですので、考えるクセをつけるようになってください。
また、この6つのスイッチは恋愛や人間関係の構築にも転用できるテクニックでもありますが、疑い過ぎては疑心暗記になりつまらない人生を送ってしまうかもしれません。
むしろ自分自身がよい関係を作りたい相手とは、はまってあげるくらいの方がよいのではないでしょうか。
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